「世界水の日(3月22日)」と日本酒
「世界水の日」が毎年3月22日に定められていることをご存じでしょうか。
世界平均の2倍もの降雨量を得ている日本では水不足を感じることは稀ですが、世界に目をやれば衛生的な水を潤沢に利用できる環境は実際少なく、水資源を守ることは人類共通の問題になっています。
今から30年も前に国連総会で定められた「世界水の日」は、水がとても大切であること、安全な水を使えることの重要性について世界中の人々と一緒に考えるために重要な日だといえるでしょう。
あらゆる生物にとって重要であるのはもちろんのこと、日本酒造りにおいても「水」は欠かせません。
ひとくちに「水」といっても、日本酒づくりに適した水は限られています。
適度なミネラル分を含み、鉄分をほとんど含まず、清潔な水が大量に必要で、古来より良質の水湧き出るところが銘酒の生産地でした。
灘五郷は中でもとりわけ「宮水」を擁することで有名で、「男酒」の異名を誇っています。水の硬度として中硬水に属する「宮水」は灘五郷の産地でもごく一部の地区でしかとれない伏流水です。
もともと水の硬度は石けんの泡立ち方を測る尺度として示されましたが、酒造りにおいては麹菌や酵母の活性に大きく関与することから、異なる角度から重要視されています。
この天与の水を酒造りに活かすことのできる灘五郷は、まさに酒造りの地として約束された特別な場所と言えるでしょう。
私たち灘五郷の蔵元は貴重な宮水を守るため土木工事の影響を最小限にとどめるなど、地域コミュニティの協力のもと灘五郷酒造組合「水資源委員会」や「宮水保存調査会」に参加して水資源管理を徹底しています。
近年格段に進化した酒造りでは軟水のメリットも見いだされています。「宮水」だけでなく複数の水をブレンドし用途に応じて使い分けることが理想的な味わいに直結することから、福寿は水の特性を研究し「水の力を活かした」酒造りを徹底的に追求しています。
この記念日を通じて、また日本酒を楽しむひとときに、その根底にある「水」に思いを馳せていただければ幸いです。