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1月のうまいもん/須磨海苔

今月のうまいもんさかばやし

さかばやし_今月のうまいもん_須磨海苔入稿用

漆黒で分厚い須磨海苔はいかが?
 魚や野菜の旬ならわかるでしょうが、少しでも人の手が入ったものなら旬の印象が薄くなるのかもしれません。その代表例が海苔です。海苔というと、大半の人は板海苔を思い浮かべるはず。それとて海産物の一種なので造る時期は決まっているもの。養殖した海苔を水揚げして洗浄し、裁断してから真水を加えて攪拌、海苔簾の上に和紙の如くすき、形を整えます。そして乾燥を経て板海苔ができるのです。そのもとは生海苔で、このような工程を経てなじみのある板海苔へと変身していくのです。海苔の収穫は、寒くなった頃。そのため1月のこの時期は新海苔のシーズンを迎えます。一年を通して板海苔などが売られているために消費者の多くは海苔の旬を知らず、そう言ってもピンと来ないのかもしれません。
 「さかばやし」が1月のうまいもんのテーマ食材とする「須磨海苔」も冬場がシーズン。12月から4月が旬といえます。9月〜10月上旬に種付けが始まり、10月下旬から育苗。11月中旬には海から網を揚げて天日干しにします。11月下旬頃、水温が18度になるのを見越して天日干しにし、冷凍保存していた海苔を海苔棚に設置します。そして12月中旬から摘み取り作業を行うのです。そのため、生海苔は冬場のものと言えるのです。そして、4月半ばには海苔の製造を終えてしまいます。
 近頃よく耳にする須磨海苔は、神戸市内で養殖されている海苔を指し、2007年に神戸市漁業協同組合が地域ブランドとして商標登録しました。大阪湾の栄養と明石海峡の潮流の中で育まれるのでアミノ酸やカルシウムが豊富。板海苔にすると、色が黒くて肉厚があるのが特徴です。須磨海苔を含む瀬戸内産の海苔は、有明産と肩を並べる日本の二大ブランドになっています。柔らかく、甘みがあって香りが高いのが有明産なら、波が穏やかで水質のいい瀬戸内海で養殖されたものは肉厚があってしっかりとした食感を持つ海苔になるのです。一般的に海苔は、十数回摘み採りが行われるようですが、中でも最初に摘み採った、俗に一番海苔と呼ばれるものは、風味が一層豊か。だからグルメは一番海苔を狙うのです。
 「さかばやし」では、地元神戸の須磨で採れた海苔の美味しさを知っていただきたく、5年前より旬の須磨海苔をこの時期に提供してきました。生海苔とは、乾燥させて造る板海苔と異なり、収穫した海苔を異物除去や洗浄を行なった後の生の状態をいいます。原藻とも言ってとろりとした食感と強い磯の香りが特徴なのです。ちなみにこれが乾燥工程を経ると板海苔になります。生海苔をぱっと散らした吸物もいいですし、酒・みりん・醤油などで煮込んで佃煮にしてもいいでしょう。
 ところで「さかばやし」では、毎年1月に須磨海苔を今月のうまいもんとして紹介。生海苔の風味を楽しんでいただくお料理や、自家製の生海苔の佃煮を提供ご用意する予定です。1月は会席料理の一部や一品料理に地元神戸で採れた須磨海苔を提供しますので、ぜひお召し上がりください。

(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
2025年1月

料理長おすすめ「須磨海苔」の一品
■須磨海苔の佃煮            550円
■須磨海苔と小松菜の煮浸し       800円
■須磨海苔と岩津葱のかき揚げ      900円
■粕汁小鍋 ~須磨海苔とともに~  1,700円
※おすすめの一品は予約にて承ります。価格は税込価格です。
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