神戸酒心館

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2月のうまいもん/酒粕料理

酒粕プロジェクト今月のうまいもんさかばやし

酒粕料理 女子大生が知恵を絞って考案した新たな酒粕料理
 
 阪神間の冬の風物詩といえば、酒粕を用いて料理を作ることです。昔から同地域に暮らす人々は、新酒の売り出しを心待ちにして、その副産物としてできる酒粕で家庭料理を作りながら冬の寒さを凌いできました。粕汁や酒粕のざらめ焼きはその代表格です。「さかばやし」の冬の名物料理にもなっている「酒屋鍋」も蔵人が作業の体の冷えを緩和させる鍋ものとして食べていたもので、それを発展させて料理化しました。
 
 ここ数年、神戸では酒粕文化の復活が叫ばれて来ました。「神戸酒心館」が旗振り役となって始めた酒粕プロジェクトがそのひとつです。この催しは今年で四回目の冬を迎えているのですが、その反響は凄く、マスメディアなどが取り挙げてくれたおかげで我も我もと料理人の方々が参加され、今季は神戸市内の35 店舗もが「福寿」の酒粕を使ってオリジナル料理を披露しています。そのうねりたるや、もはやブームと呼んでもいいくらいに成長したようです。 
  
 「さかばやし」でも他店に負けじと本プロジェクトに際して新たな酒粕料理を登場させました。一つは「二月の雑煮」です。雑煮といえば正月料理を連想させますが、実は室町期に武家の宴会で最初の料理として供されていたのがそのきっかけです。煮雑( にまぜ) が原型で、定義としては決まったものがありません。強いていえば、後年になってからできた歳神様に供えた餅を入れる習慣と、その地方らしい具材が入っていることぐらいです。そこで「さかばやし」では、酒粕プロジェクトの一環として、この寒の時季に酒粕を加えた雑煮料理を提供することにしたのです。関西の雑煮の定番である白味噌仕立てに、あえて酒粕を加えることで、甘めで酒の香漂う一品ができあがりました。具材は二月=節分と捉えて豆をモチーフにあんを入れます。流石に炒り豆とはいかないので、あえて甘すぎない塩あんにしています。それとこの地域の代表的素材・明石たこを柔らか煮にして加えました。これまで味わったことのない一風変わった雑煮ができあがりましたので、二月の寒の時季にぜひお召し上がりください。
 
 今年の酒粕プロジェクトでは若い人達の知恵を借りるべく、大阪樟蔭女子大学学芸部ライフプランニング学科とコラボレーションをしてメニュー開発を行いました。同大学で私が行っている講義( フードメディア研究) の中で、酒粕について勉強をし、彼女達にオリジナルメニュー作りに挑戦してもらいました。その結果誕生した料理が、二月中提供させていただく「ちらっと酒粕ちらし寿司」と「よりちゃんの酒粕おはぎ」。前者は、酒粕入りの酢飯を用い、木枡でちらし寿司を表現したもの。青黄赤白黒(しょうおうしゃくびゃっこく) の色彩を具材で表現した、まさにインスタ映えしそうなちらし寿司で、ご飯に酒粕を合わせた斬新さが光ります。片や「よりちゃんの酒粕おはぎ」は、白あんのおはぎに酒粕を混ぜた、これまた斬新なものです。酒粕が強くですぎないように豆乳でペーストにしてあんに混ぜ込んだ技法がユニークです。メニュー開発の中心となってあんづくりを行った森夜梨子さんの名前がメニュー名に冠されています。ちなみに「ちらっと酒粕ちらし寿司」を考えたのが、同大学の川中恵莉さん、細川真衣さん、鍋島美帆さん、竹内明日香さん、山本亜由美さん達で、「よりちゃんの酒粕おはぎ」は、青木里穂さん、羽原里香さん、藤原千紘さん、森夜梨子さん達の作品です。ともに大学生らしいユニークなメニューになっています。提供期間は二月いっぱいですのでこの機会に是非お召し上がりください。
 
2018年2月/フードジャーナリスト・曽我和弘
 
酒粕雑煮