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10月のうまいもん/婦木農場の秋野菜

今月のうまいもん

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婦木農場の秋野菜

野菜は、作り手や土・天候によって変わる産物

 「米がない!」。8月頃からそんな話題が世間を駆け巡りました。全国的に見て去年は米が不作で、その煽りが今夏に響いているそうです。政府は、「まもなく新米が出るので焦らないで」と言うものの、スーパーの棚や米屋から米がなくなれば、慌てふためく消費者の気持ちもわからなくはありません。農作物は、工業製品ではないので様々な自然環境の影響を受けることが多いです。今年は昨年以上に猛暑日が長く、こんな異常事態が続くと、我々の食生活にも不安が募るのも仕方のない事かもしれません。
 そんなニュースを尻目に今年も「さかばやし」では、「婦木農場」の野菜をテーマに今月のうまいもんとして、会席料理の一部や一品料理に丹波「婦木農場」で収穫された野菜を提供します。更に10月29日の夜には、農場主である婦木克則さんご夫妻を招いて旬の会を催す運びになっています。
 「婦木農場」のホームページを開くと、秋の産物は大納言小豆、大豆、黒豆の枝豆、さつまいも、里芋、かぶ、ブロッコリーなど。勿論、自慢のお米も入ります。「婦木農場」の田んぼの面積は5ha。紙マルチを使った田植えによる無農薬栽培と、除草剤を一回だけ使用した減農薬栽培で作っており、コシヒカリの他に酒米である兵庫北錦や山田錦、餅米のヤマフクモチが収穫されています。
 野菜づくりも家族総出で行う作業。約1.5haある畑で年間120種以上の野菜が生産されます。牛舎から出る牛糞を利用した堆肥を用いて土づくりを行い、自然の力をいかして手間暇かけて行うそう。雑草が勢いよく伸びる季節もせっせと手作業で草引きに励んで野菜づくりを行っているようです。婦木克則さんは、「牛の乳を搾り、鶏が卵を産んで、米や野菜を育ててと、昔ながらの農家です」と謙遜しますが、そんなに丁寧に作物を作り続けている点が消費者や料理人から高く評されているのでしょう。昔から無農薬栽培に注力して来た証しで、野菜や米は、何事も便利になった世の中でもあえて手作業でと、脚光を浴びています。安心・安全が目に見える産物と言っても過言ではありません。
 我々は、野菜と一口にくくってしまいますが、全ては人による作業と自然環境を伴う産物で、作る人や土によって味わいが変わるのは必然的。まさに作り手の表情が表れるものと言ってもおかしくはありません。米であれ、蕪であれ、里芋であれ、作り手の思いがそこには込められているのです。私が秋の産物に特に期待を寄せるのが、黒枝豆。丹波の秋といえば、黒豆や栗が特に有名ですが、丹波・春日町にある「婦木農場」でも当然の如く黒枝豆が収穫されます。黒枝豆と黒大豆の違いは収穫時期によるもので、黒枝豆は10月頃から約2週間と収穫が短いのが特徴です。枝豆で収穫せずにそのまま置いておくと、おせち料理でおなじみの黒大豆になるのです。以前、「さかばやし」で「婦木農場」の野菜をテーマに旬の会を催した折りに、先付の一品に黒枝豆が籠に盛られて出て来ました。まるで丹波の秋を運んで来たかのようで、その黒枝豆の旨さに舌鼓を打ったのを今でも鮮明に覚えています。さて、今年は待望の黒枝豆が登場するのやら、天候とにらめっこしながら待ちたいものです。
 冒頭に述べたように「さかばやし」では、丹波「婦木農場」の秋野菜を10月のうまいもんとして、会席料理の一部や一品料理で提供します。婦木克則さんご一家が家族総出で育て上げた秋野菜を、ぜひともこの機会にお楽しみください。

(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
2024年10月

料理長おすすめ「丹波婦木農場の秋野菜」の一品料理
■婦木農場小松菜のお浸し          850円
■婦木農場秋茄子と秋刀魚酢〆       900円
■婦木農場秋野菜炊き合わせ       1,000円
■穴子と婦木農場野菜の天ぷら      2,550円
※おすすめの一品は前日15時までのご予約にて承ります。
※価格は税込価格です。
※写真はイメージです。