神戸酒心館

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9月のうまいもん/無花果(イチジク)

今月のうまいもんさかばやし

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神戸は農業王国で、イチジクが名産

 神戸は、おしゃれな街として知られ、イタリア料理、フランス料理などの外国料理が発達。神戸を含む阪神間ではスイーツも有名で、旅する人達はそれらを目的に街を巡るようです。一見、おしゃれなグルメが際立つように思えますが、実は神戸は農業王国。菊菜やホウレン草など俗に軟弱野菜と呼ばれるものは、全国的にも秀逸なのです。神戸の農業は、都市近郊型で、地の利をいかした産物が多く見られます。軟弱野菜はその代表ですが、イチジクも同じです。イチジクは、足が早く、雨でも降れば皮がズルズルになり、商品価値が薄れてしまいます。そのため、イチジクは都市近郊型農業にふさわしい産物といえるのでしょう。
 イチジクは、関西の川西・神戸・羽曳野(大阪)が三大産地といわれています。特に兵庫県は有名で、日本市場の80%を占めるといわれるイチジクの品種「桝井ドーフィン」は、かつて国内で栽培が盛んだった蓬莱柿(ほうらいし)に比べると、果実が大きく、果皮がしっかりしたもの。繊細なイチジクのわりには輸送がしやすい点が良くて日本で一気に広まりました。広島県佐伯郡宮内村(現在の廿日市市)出身の桝井光次郎さんが明治41年に米国よりドーフィンを持ち帰って育苗したために「桝井ドーフィン」と呼ばれるようになったそうです。桝井光次郎さんは、果樹地帯だった川西に着目し、友人の前川友吉さんと一緒に川西でドーフィン種を栽培。その栽培に成功したため、一躍川西が産地として名を挙げました。その流れが神戸の農家にも広まり、いつしか神戸市西区はイチジクの産地となって行ったのです。
 イチジクは、昔から不老不死の果実とされ、その実には薬効があるといわれて来ました。水溶性食物繊維(水に溶けやすい)と不溶性食物繊維(油に溶けやすい)の二つの食物繊維を有し、カリウム・カルシウム・鉄分などの栄養が詰まっています。またカロリーは、葡萄などに比べると低いため、ダイエットにいいとされ、女性にことさら人気があります。イチジクは、夏から秋へかけての果実ですが、夏果と秋果に分けられます。6月〜7月頃に収穫されるのは夏果で、「今月のうまいもん」として取り挙げるのが秋果。秋果は8月〜10月に収穫されるものを指します。9月になると、神戸では市内で収穫されたイチジクなどを使って商品づくりを行う神戸食材フェアが催されます。神戸は兵庫県下最大の生産量を誇り、農地から消費地までが近いことを利して、収穫をぎりぎりまで待って完熟まで育てて出荷することができるのです。主に伊川谷町や岩岡町、神出町、平野町で産されたものを「神戸イチジク」と称し、ブランド化を図っています。
 「さかばやし」では、本年も神戸食材フェアに参画しています。また、9月のうまいもんのテーマ食材として「神戸イチジク」を選び、会席料理の一部や一品料理に使用します。イチジクは、やはり生で食べるのが良いところですが、その甘みを使ってソースやジュレを作ってもよく、調味にも最適です。味噌や胡麻クリームともよく合うので、様々な調味の仕方が可能です。シンプルに天ぷらにしても相性がよく、デザート以外にも色々な楽しみ方が得られます。今月は地元・神戸産のイチジクを存分に味わいながら初秋の味覚を楽しむのもいいのではないでしょうか。

(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)

料理長おすすめ「無花果」の一品
■無花果の胡麻味噌掛け 1,100円
■無花果の天ぷら 1,200円
■無花果とクリームチーズの生ハムのせ  1,500円
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