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9月のうまいもん/神戸のいちじく

今月のうまいもんさかばやし

いちじく01cs

全国的に名を轟かせる神戸の農産品

一般の方は、意外な印象を受けるかもしれませんが、実は神戸は農業王国。海に面した都市部は一部分にすぎず、北区や西区には農地が広がっています。産物としては、春菊やホウレン草などの軟弱野菜が有名で、苺やいちじくも特産品に挙げられます。特にいちじくは、都市近郊型農業に向いているので有名。いちじくの産地は、愛知・和歌山・兵庫・大阪が多く、兵庫県下では川西と神戸が生産地として知られています。それほどいちじくは、関西に根づいた果物で、日持ちがしないため近くに消費地がある神戸には適しているのでしょう。
神戸において多く産しているのは、西区。同地域では60軒もの農家がいちじく栽培を行なっているらしく、神出、岩岡、平野、伊川がその産地です。なぜ神戸にそれだけに多くのいちじく農家があるのでしょう。西区のいちじく部会部会長で自身でもいちじくを栽培している西馬良一さんは「1960年代に国策によって水田転作奨励されたのがきっかけ」と説明します。「いちじくは秋までに収穫が終わり、他の品目と組み合せがいいから栽培には好都合」らしいのです。それに消費地が近いことも加わり、栽培する農家が増えたと思われます。当初神戸も川西のような開芯型で作っていましたが、一文字整枝を導入。この栽培方法が神戸から全国へ広まり、いちじく栽培の主流を成すようになりました。西馬さんに聞くと、神戸のいちじくは8月中旬頃から10月半ばまで収穫するそう。同じ木でも下から実をつけて行き、熟すのに90〜100日かかると言います。「一本の木からは22〜23個採れます。2個ずつ熟して行き、次の実が熟すのに6日かかります」。昔のやり方だと収穫の山ができてしまうのですが、神戸の栽培法では計画的に出荷できるので、全国的に広まったのも理解できます。いちじく栽培にとって雨は天敵で、降雨の影響で病気が出たり、水っぽくなったり、色が悪くなったりするらしく、西馬さんが「夏の天候が出来、不出来を左右する」と教えてくれました。収穫作業は農家にとって大変なもの。神出では、午前0時から3時に実を採り、それを箱に詰めて朝7時には出荷作業を終えます。まさに昼夜逆転の生活で、西馬さんの話を聞きながら栽培や収穫作業の大変さがわかりました。
 いちじくは、完熟が最も旨く、いかにぎりぎりまで収穫を待つかが勝負。神戸のいちじくが旨いといわれる所以は、消費地が近いため完熟で出荷できるところにあります。「和歌山は距離的な問題からまだ硬い状態の実を採って輸送中に熟す方法を用いねばなりません。その点、神戸は完熟で採って出せるから美味しい」と事情通も話していました。農家の人によると「肌ざわりと持った柔らかで判断し、旨いのがわかる」そうです。西馬さんは「最も旨い食べ方は、かぶりつくことですよ」と笑いながら教えてくれました。我々は皮を剥いて食べますが、「熟したのは皮ごと食べるのが旨い」そう。皮の部分にはアントシアニンが沢山含まれ、甘味もあるからです。皮が気になると思われがちですが、熟しているから皮がとろけるため、あっても気にならないようです。実の中にある白いプツプツした部分を私達は果実だと誤解していますが、実は花。実と思われる中に花を咲かせる変わり種果実がいちじくで、漢字で〝無花果″と書くのは、そんな形を表しているからなのです。
 ところで「さかばやし」では、神戸名産のいちじくを9月のうまいもんとし、会席料理の一部や一品料理にてお楽しみいただきます。ぜひ地元の名品をこの機会に味わってください。

(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)

料理長おすすめの「神戸産いちじく」
■神戸産 いちじく白衣掛け            1,000円
■神戸産 いちじく揚げ出し            1,200円
■神戸産 いちじくとクリームチーズの生ハム巻き  1,300円

※おすすめの一品は前日15時までのご予約にて承ります。
※価格は税込価格です。
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