7月のうまいもん/麦わらダコ
タコと夏場の冷製粕汁で猛暑を乗り切ろう
タコが美味しい季節になってきました。昔からこの季節のタコは、麦わらダコと呼ばれ、関西ではグルメな食材として持て囃されてきたのです。タコの旬は、6~8月といわれ、麦わら帽子をかぶる頃や麦の収穫期と同時期だったので、いつしか麦わらダコと呼ばれるようになったのでしょう。夏場のタコは、太く短い足と甘みがあるのが特徴で、噛めば噛むほど味わいがあります。
関東では、正月に酢ダコを食べる習慣があるようですが、関西ではタコは身近な食材なのか、一年中食すイメージが強いようです。ただ昔から半夏生(はんげしょう)にはタコを食べる習慣があるので、一年のうちでもやはり夏はタコ好きにとって特別な雰囲気が漂っているのも事実なのでしょう。そもそも半夏生とは雑節の一つで、夏至から数えて11日目をそう呼んでいました。現在では、天球上の黄経100度の点を太陽が通過する日に定義づけられており、毎年7月2日頃がそれに当たるのです。半夏生は農家にとって大切な日で、この日までに田植えを終えないといけないといわれてきました。そして関西の農家では、半夏生にタコを食べ、大地にうまく稲が根づくようにと祈ったため、半夏生というと、タコを思い浮かべる人が多いのです。
明石ダコに、北淡ダコ、泉ダコと関西には名産的なタコが多く存在します。全世界を見渡せば、タコの収穫量は約26万t。その約半数がアフリカの北西部で、モロッコやモーリタニヤはその産地として有名です。安価で売られているものの大半は、そのような輸入品が占めているのではないでしょうか。日本近海では約4~5万tの水揚げがあり、北海道海区・瀬戸内海区・東北海区が主産地として知られています。中でも兵庫県は、マダコの漁獲量が日本一で、明石ダコが高級品として扱われています。産地としては明石ほど目立たぬものの、淡路島産も明石に劣らぬくらい質が良いのです。それもそのはずで、北淡の漁師に言わせると、「獲る海域は同じなのだから質がいいのは当たり前。どちらの浜で揚がったかで、その名は変わる」との話。ならば明石ダコも北淡ダコも一級品と言ってもおかしくはありません。
ところで話は変わりますが、「さかばやし」では冬場の酒粕プロジェクトよろしく、酒蔵を挙げて粕汁の普及活動に注力してきました。粕汁というと、どうしても冬場の料理の印象が強いのでしょうが、今年は夏でも粕汁をお楽しみいただこうと、夏の粕汁を開発したのです。加賀爪料理長が今回考案した粕汁は、ビシソワーズ仕立ての粕汁。ビシソワーズとは、仏料理に登場するじゃがいもの冷製ポタージュスープのことで、この料理は、ニューヨークのリッツカールトンホテルのシェフ、ルイ・ディアがその昔考案したもの。20世紀にアメリカ合衆国で創られたスープの中ではもっとも有名なものです。加賀爪料理長は、ビシソワーズの要領で、「福寿」の酒粕をアレンジして、夏場の粕汁をうまく具現化しました。このスープは、一品料理としても味わえるのは勿論のこと、お持ち帰り用に「さかばやし」で販売する予定となっています。
猛暑列島・ニッポンは、今年も温度が急上昇気味。暑くて嫌な季節を迎えますが、ぜひ旬の食材・麦わらダコと、新作「ビシソワーズ粕汁」を味わいながら、猛暑を乗り切りたいものです。
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
料理長おすすめ「明石蛸」の一品
■明石蛸の燻製 1,100円
■明石蛸の唐揚げ 1,400円
■明石蛸の旨煮 1,700円
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