7月のうまいもん/明石ダコ
明石ダコ
「昔も今も、この季節にはタコを食べて元気を取り戻す」
7月はタコの季節、そう言われても関西で暮らす我々にはピンとこないのかもしれません。ましてや普段から明石タコなるブランド食材を食べていればそうかもしれません。かく言う私も、半夏生(はんげしょう)なる言葉を聞いたのは東京の方から。某メーカーのレシピサイトを企画していた折りに「関西では7月にタコを食べる習慣があるのでしょう?」と問われたのです。私としては、普段から明石タコや北淡タコを食べつけており、7月だからといって気にして食べていたわけではなかったので、半夏生にしても曖昧な返事を返すしかありませんでした。ところが調べてみると、半夏生は関西の習慣で7月2日頃にタコを食べるとあるのです。ぜひ、これは復活すべきと、「神戸酒心館」とともに"忘れかけていた日本の風習を再び"と、4年くらい前から半夏生をアピールしています。その一つが「さかばやし」で催す「旬の会」で、毎年この時期はタコをテーマ食材にして催しています。明石浦漁協も主旨を理解して良いタコを提供していただけるので、毎年好評を博しています。
さて、半夏生とは何かを説明しましょう。半夏生は雑節(七十二候)の一つで、かつては夏至から数えて11日目を指しました。今は、天球上の黄経百度の点を太陽が通過する日となっており、それが7月2日にあたります(年によっては7月1日の時もある)。これが半夏(カラスビシャク)なる薬草が生える頃とされ、一年の半分を生きたこともあって半夏生と呼ぶようになりました。
半夏生は、農家にとって大切な日で、昔はこの日までに田植えを終えないといけないと言われていました。半夏生の5日間は働くことをやめ、井戸に蓋をしたものです。これは天から降る毒を防ぐ意味からで、この日に採った野菜も食べてはいけないといわれていたそうです。そして関西では、タコを食べて稲の生育を祈ったのでしょう。なぜタコかというと、タコの足のように稲が大地に根づくことを意味しています。今でこそ迷信のように伝わりますが、あながちそうでもなく、田植えで疲れた身体を休める意味があったり、井戸に蓋をするのもその頃の生水を飲まない方がいいとの理由づけがあったように思われます。また、タコには健康栄養ドリンクにも含まれているタウリンなる成分が含まれており、それが疲労回復に働くのです。
「さかばやし」では、今年も半夏生復活を謳いながら会席料理の献立や一品料理に、明石浦漁港で水揚げされた明石タコを提供しています。明石タコはタコの中でも名品と呼ばれるもの。明石沖には鹿之瀬など格好の餌場があって、そこでエビやカニ、貝類などを食べるためにタコの味が美味しくなるとされています。梅雨明けの7~8月頃がタコ漁の最盛期で、年間のほぼ半分の漁獲量を占めるそうです。漁師が麦わら帽子をかぶって出かけるために、この頃のタコを麦わらダコと呼んでいます。明石タコは、足が太く、弾力があって歯応えがいいのが特徴で、今や地域ブランドにもなっています。一年で最も美味しい季節の明石タコを「さかばやし」では提供いたしますので、ぜひこの機会にご賞味ください。
(フードジャーナリスト・曽我和弘)
料理長おすすめ「明石ダコ」の一品
■明石蛸の燻製 1,000円
■明石蛸の唐揚げ 1,300円
■明石蛸の柔らか煮 1,400円
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