7月のうまいもん/明石ダコ
「半夏生復活を願って皆でタコを食べるべし!」
全国的に見て明石の魚は有名で、料理人垂涎の的といえます。明石の魚と呼ばれているのは、明石駅から南西の位置にある明石浦漁協で水揚げされたものを指します。明石浦の名物は、鯛・タコ・海苔で、漁協の人にいわせると「タコに乗り(海苔)たい(鯛)」と覚えるのがいいそうです。同漁協は、魚の扱いが丁寧で、活けのまま出荷することに重きをおいています。漁協の一階部分に大きなプールを設けて釣って(網で獲って)来た魚を活け越し、泥吐きをさせてからセリにかけます。こういったシステムを採用している漁協は全国でも珍しく、そのため明石の魚は一級品扱いされているのでしょう。
ところで「今月の旨いもん」として選んだ明石ダコのことですが、これはマダコのことで、体の茶色が濃く、ツノがあるのが特徴で、足も太く短いとされています。明石海峡の潮の流れが激しく、そこで生息しているために身が締まって美味しくなるのです。しかも鹿之瀬と呼ばれる海底丘陵は彼らの格好の餌場になっており、そこで甲殻類をいっぱい食べて育つのです。明石ダコについてこんなエピソードがあります。ある時、タコ焼き屋を始めたいという人が全国各地からタコを取り寄せたそう。多くのタコを食べた結果、最も美味しかったのが明石ダコで、それを用いてタコ焼き屋をスタートしようと計画したようです。ところが肝心の焼き手が甲殻類アレルギーで、泣く泣くその計画を断念したそうです。なぜ甲殻類アレルギーが原因でやめたかというと、その人は明石ダコを食べてそれが出てしまったのです。そこまで影響するほど明石のマダコは、甲殻類を沢山餌にしているということで、この餌がタコを美味しくする要因の一つだと言えます。ですので、他所で獲れたものと味わいが違うのも納得いきます。
では、「さかばやし」がこの時季に明石ダコを食材としてなぜ取り挙げるのかというと、それは関西に古くから伝わる半夏生(はんげしょう)を復活させるべき活動を含めてのものです。半夏生とは、七十二候の一つの雑節で、昔は夏至後10日目から小暑の前日までをいったものですが、現行の暦では太陽の黄経が100度に達する日をそれにしており、7月2日頃が半夏生にあたります。昔はこの日までに田植えを終えないと、秋には実りが少ないと言われたようです。そして田植えを終わらせた関西の農家では、半夏生にタコを食べる習慣がありました。これにはタコ足のようにしっかり稲が根づくようにとの願いが込められています。
昨今、ニッポンの社会では、ハロウィンやイースターが流行しており、宗教的にも文化的にも異なる日本の地で持て囃すのも疑問が生じます。それならばと、半夏生の習わしを復活させ、7月に皆でタコと食べるのがいいのではないでしょうか。
「さかばやし」では、7月に会席料理の一部に明石ダコを用いて献立をご用意しております。一品料理にも明石ダコの献立をご用意しております。ぜひ日本の古き良き習慣を復活させる意味でも7月は明石ダコをお召し上がりください。
(フードジャーナリスト・曽我和弘)
☆明石ダコの料理長おすすめ夜の一品料理
・明石蛸の燻製 900円
・明石蛸の湯引き 1,100円
・明石蛸の唐揚げ 1,300円
・明石蛸の柔らか煮 1,200円
※価格は税込み価格です。
※日替わりのため、献立に変更の場合もございます。