3月のうまいもん/酒粕料理
酒蔵ならではの一品はいかが。
2月に引き続き、3月も“今月のうまいもん”は、酒粕を取り上げます。皆さんもご存じのように1月初旬の緊急事態宣言の発令に伴い、飲食店は20時までの時短営業を強いられました。その影響により、2月1日からスタートする予定でいた酒粕プロジェクトも大々的に打ち出していくことが難しかったため、2月のみの実施期間を4月まで延長し、神戸酒心館が旗振り役を担いながら兵庫、大阪の参加店舗と一緒に酒粕ブームを盛り上げて行きます。そのため、「さかばやし」の“今月のうまいもん”も酒粕料理を継続することに変更しました。
酒粕料理というと、真っ先に挙がるのが粕汁でしょう。粕汁とはご存じのように酒粕を加えた汁物料理。灘を背景に持つ阪神間と大阪、そして伏見がある京都に伝わる伝統的和食です。関西人にとってなじみの深いこの料理も、実は愛知県以東ではあまり食べられておらず、東国の人に「粕汁」と言ってもどのような料理かわからない人が多いようです。私達は神戸に住んでいるため、「粕汁」は子供の頃から慣れ親しんでいる料理です。神戸市では小学校の給食の献立に「粕汁」が登場する地域もあります。酒粕は、「かす」という言葉がおかしく思えるほど栄養効果の高い食材。血管を拡張してくれる作用もあるので、食べると血行がよくなり、身体をポカポカと温めてくれ、冷え症改善にもつながると言われています。また、麹菌の酵母の細胞壁に含まれる成分に免疫力を高めるものがあるとされるので、コロナ禍の今にはふさわしい食材かもしれません。
寒造りを行う日本酒の蔵元では、寒さの中で働く蔵人が粕汁を食べ、その身を温めていたようです。その粕汁を具沢山の鍋料理に仕立てたのが「さかばやし」の「酒屋鍋」。この料理は、「さかばやし」の冬の名物であり、一冬に一回はこれを食すという方も少なくありません。「酒屋鍋」は「福寿」の酒粕と白味噌で仕立てた酒蔵ならではの鍋料理で、鮮魚や豚肉、野菜と酒粕を用いた特製出汁で煮込むことによって、具材に酒粕の旨みが染みわたり、他の鍋物とは一味違った味わいが楽しめます。
今年は、おなじみの「酒屋鍋」に加えて、新たに「酒かす豆乳鍋」が加わって2021年の酒粕プロジェクトを盛り上げます。この商品は当初お持ち帰り商品として限定販売していましたが、ご好評につき店内でもお楽しみいただけるようになりました。「さかばやし」の冬の一品に昇格したものです。酒粕と豆乳の相性の良さが評判を呼んでいます。お持ち帰り商品も現在継続していますが、ぜひ店内で好評の「酒かす豆乳鍋」をご賞味いただきたいものです。健康食材として高く評される酒粕に、これまたヘルシーな豆乳が加わるのですから“健康”をテーマには持ってこいの一品といえるでしょう。「福寿」の酒粕と濃厚な国産大豆使用の豆乳は、まろやかな風味を実現。酒粕と豆乳の旨みが具材の味わいをより一層引き立ててくれるはずです。
汁物であるはずの粕汁に肝心の汁気を取ってしまった料理「汁なし粕汁~淡雪仕立て~」なる珍しいメニューも登場しました。これは、大阪樟蔭女子大学の三回生が酒粕プロジェクトのために考案した新しい料理。従来からある粕汁の概念を取り払い、煮物として粕汁を表現した斬新なものです。煮物にすると、粕汁の白さが失われてしまうと考え、メレンゲで具を覆い、淡雪仕立てにした点もユニーク。女子大生らしい発想の料理です。このチームとは別のグループが創作した「ほっこり酒粕みそ餡かけ」とともに4月まで酒粕プロジェクトの一品として「さかばやし」で提供を予定しておりますので、“今月のうまいもん”としてお楽しみください。
※「汁なし粕汁」「ほっこり酒粕みそ餡かけ」「酒かす豆乳鍋」は2日前までにご予約ください。
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
料理長おすすめ「酒粕料理」の一品
■粕汁小鍋 1,300円
■酒粕チーズ 1,100円
■帆立貝の酒粕和え 800円
「酒粕プロジェクト」の「酒粕料理」
■酒かす豆乳鍋 4,500円(1人前)
■汁なし粕汁 淡雪仕立て 950円
■ほっこり酒粕みそ餡掛け 700円
※おすすめの一品は予約にて承ります。価格は税込価格です。
※酒かす豆乳鍋は2人前より承ります
※酒粕プロジェクト料理は2日前の要予約