2月のうまいもん/酒粕料理
若き女性の発想が詰まった新感覚の酒粕料理
毎年2月になると、酒粕を今月の「うまいもん」として取り挙げます。その理由は「酒粕プロジェクト」が始まるからです。同企画の旗振り役を神戸酒心館が務めており、それに伴いこの時季、蔵の料亭「さかばやし」でも酒粕料理を提供することになっているのです。「酒粕プロジェクト」とは、年々薄れて行く「酒粕文化」を絶やすことなく世間に伝えようと始めたもので、神戸の飲食店が参加して、「福寿」酒粕を用いて料理の提案を行う企画です。2015年に始まったのが、いつしか活況を帯び、神戸の冬の風物詩になりました。また、巷の酒粕ブームへと発展するきっかけにもなりました。今年も、2月から4月まで「酒粕プロジェクト」は開催いたします。今回は、神戸市内での開催と枠を取り払い、兵庫県下・大阪府下まで参加店を拡大いたしました。結果、神戸7店舗、三田1店舗、淡路島1店舗、大阪4店舗、泉佐野1店舗の飲食店・ホテルに、5つの企業・団体が加わった計19の店舗、企業が集いました。これらは「福寿」酒粕を用いてその味を競い、酒粕文化復活を謳います。
「酒粕プロジェクト」においては「さかばやし」での提供料理は、おなじみの「酒屋鍋」に、新たに加わった「酒かす豆乳鍋」。健康食材でもある酒粕に、さらに健康的な豆乳が加わって鍋の風味を形づくります。今年の同プロジェクトテーマである「酒粕料理でコロナ禍をぶっ飛ばせ!」にふさわしい鍋料理になっています。ちなみに「酒かす豆乳鍋」は、店舗でもご家庭でも味わえるようにと販売しております。
「酒粕プロジェクト」で毎年話題を呼ぶのが女子大生が考案した酒粕料理で、これは、大阪樟蔭女子大学の学芸部ライフプランニング学科の一つの授業とコラボした企画です。同大学では、私が教える「フードメディア研究」なる授業の中で学生に「酒粕プロジェクト」への参加を促しています。「フードメディア研究」を受講している学生をチーム分けして、新たな酒粕料理を考案する課題を出し、「福寿」酒粕を手渡し、プランニングをしてもらいます。約2カ月間かけて彼女らは独自の酒粕料理を考え、各々の作品をプレゼン大会に出品しその作品を、神戸酒心館のスタッフ達が審査するのです。21歳の若き才能は、プロ顔負けの作品を考え、酒粕に接して来た蔵元が驚くらいの斬新さに。まさに甲乙つけ難い酒粕料理が発表されるというわけです。
その作品の中から選ばれて蔵の料亭「さかばやし」の献立になったのが、「汁なし粕汁 淡雪仕立て」と「ほっこり酒粕みそ餡かけ」の2品です。「汁なし粕汁 淡雪仕立」は、坂本野の子さん、鳥居咲良さん、本田梨沙さん、橋本歩奈さん、西村朱々香さんの5名が考案した料理です。酒粕料理の定番である粕汁から汁気を取り払い、焚き合わせ風にしたユニークな発想が評価されて商品化されました。具材は粕汁と同じで、汁物にしないために少し強めに酒粕味を加えて具現化します。汁なしでは粕汁の白い色のイメージがつかないと思ったのでしょう、卵白に酒粕を加えたメレンゲで具材を覆うことで白を表現しました。中から何が出て来るのかというワクワク感を持たせています。
一方、「ほっこり酒粕みそ餡かけ」は、廣野陽美さん、南部早希さん、吉田優希さん、吉村瑛理子さん、嶋田志保さんのグループが考えた料理です。くり抜いた大根を器にし、その中に酒粕を用いた炊き込みご飯を入れて上から酒粕みそを掛けて提供します。制作した学生のひとり、吉田優希さんが「今の時代らしくエコ的要素を随所に取り入れた料理です」と言うだけあってフードロスの観点からもよく考えられています。器まで食せるようにと炊いた大根を用いた点や、くり抜いて出た大根を細かく刻み、酒粕みそに混ぜた点が評価できると思います。SDGSを経営の中核に位置付けた神戸酒心館の考え方にもフィットした作品に仕上がりました。これら大阪樟蔭女子大学生の作品については、要予約にて「さかばやし」で4月末まで提供しますので、ぜひご賞味いただければと思います。2月は彼女達の作品を含め、鍋物や一品料理に蔵の料亭「さかばやし」ならではの酒粕料理を提供いたします。今月の「うまいもん」としてオリジナルの酒粕料理をお楽しみください。
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
料理長おすすめ「酒粕料理」の一品
■粕汁小鍋 1,300円
■酒粕チーズ 1,100円
■帆立貝の酒粕和え 800円
「酒粕プロジェクト」の「酒粕料理」
■酒かす豆乳鍋 4,500円(1人前)
■汁なし粕汁 淡雪仕立て 950円
■ほっこり酒粕みそ餡掛け 700円
※おすすめの一品は予約にて承ります。価格は税込価格です。
※酒かす豆乳鍋は2人前より承ります
※酒粕プロジェクト料理は2日前の要予約
※写真はイメージです