12月のうまいもん/淡路島三年とらふぐ
証明書付きで産地もはっきりした淡路島・福良の産物
有名になると、それを模倣するものや、ひいては偽装品まで出回る昨今。「それを有名税と呼ぶべき」と言う人もいますが、開発者は納得できないのでは…。淡路島・福良で育てられている三年とらふぐは、今や兵庫県を代表する産物といわれるまでに成長しました。漁業関係者の間では、「近頃は三年とらふぐと偽って販売される事がある」と噂されています。それ故、三年とらふぐを仕入れると、最近は、証明書を兼ねたハガキが入っています。スクラッチくじが付いたものですが、これはPRよりも証明書に重きを置いているかもしれません。
淡路島の三年とらふぐは、福良の沖、大鳴門橋がすぐそばに見える辺りで養殖されています。福良の沖合は、淡路島と四国に挟まれる形で海域が狭くなっており、鳴門の渦潮よろしく、潮の流れが速い。このような場所で泳いでいるのですから身が引き締まるのは当然です。何でもフグの養殖にしては、全国で最も水温が低いらしく、そんな環境が重なり合って旨くなるといわれています。よく私に「三年とらふぐは、天然ですか?」と聞く人がいますが、その年齢を示しているのですから当然、天然ではありません。でも、その言葉は、それだけ天然レベルに近い味を誇っている証拠なのでしょう。一般的にとらふぐは二年で出荷されていきます。二年もので大きさは800g以下。それ以上大きくするにはもう少し歳月が必要になってきます。福良では、あと一年がまんして三年になった時点で出荷をしているのです。だから二年ものの倍くらいの大きさになっています。とらふぐは大きい方がいいと言われ、特に1.2kgを超えると、旨みも歯応えもよくなるようです。ならばいずこもそれを行えばいいではないかと思いますが、一年余計に養殖することでどっとリスクも増えてしまいます。大きくなれば、互いに噛みあって傷つけあうため、それを避けるために養殖業者はいったんプールへ移し、ペンチのようなもので歯を取ってしまうそうです。歯がなくてもとらふぐはそんな硬い餌を食べないので十分暮らしていけます。それよりは互いを傷つけるリスクの方が恐いと漁業関係者は教えてくれました。一年の余計な歳月は、かなりのリスクが伴うらしく、彼らに聞くと「残るのは、せいぜい半分くらい」とまで言われています(少し大袈裟かもしれませんが…)。とらふぐは繊細で臆病、だから単に泳いでいるだけでもストレスをためてしまうようです。養殖業者は、常に神経をすり減らしながら育てています。「手のかかる子ほど可愛い」の例えのように、手間暇かけて育てたとらふぐの方が美味しいのです。
近年、淡路島では、福良の三年とらふぐを冬の味覚の代表としており、各旅館・ホテルがこぞってそれを名物にしています。そのため、冬になると淡路島へ泊りがけで行き、てっちりを食べて来たなんて話をよく耳にします。かつて、養殖は安いからいいと仕入れていた時代がありました。「養殖は天然に劣る」と未だに言う料理人もまだまだいます。それが、三年とらふぐは革命的成功をし、天然ものにも負けない味を創出したのです。産地のはっきりしない下関産よりも環境もわかっている淡路島産の三年とらふぐの方がいいと言う食通は年々多くなっているようです。
「さかばやし」では、毎年12月になると淡路島三年とらふぐを仕入れ、会席料理や一品料理に使用して提供しています。今年も風の冷たさと同時にその季節がやってまいりました。勿論、証明書付きの三年とらふぐを今年も"今月のうまいもん"として取りあげてみましたので、ぜひご期待ください。
(フードジャーナリスト・曽我和弘)
料理長おすすめ「淡路島三年とらふぐ」の一品
■淡路島三年とらふぐのてっさ 1,200円
■淡路島三年とらふぐの唐揚げ 1,700円
■淡路島三年とらふぐの小鍋 2,500円
※価格は税込みです
※数量限定となっておるため、品切れの場合もございます。