12月のうまいもん/淡路島三年とらふぐ
天然にも優るとも劣らぬ兵庫県の名産品
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冬になると“淡路島三年とらふぐ”の文字を目にする機会が多くなりました。昨今、魚が獲れないとの声が聞かれ、日に日に天然魚の水揚げが減っています。殊、真鯛に至っては、21%が天然で、79%が養殖という生産量で、今や養殖魚抜きにして日本の魚は語れないところまで来ているのがわかります。全国海水魚協会のホームページを開いてみると、養殖魚のパイオニアは鰤(ブリ)、八町(ハマチ)で、次いで優等生が真鯛、そして生産量第3位が間八(カンパチ)だというのがわかります。養殖魚と天然魚を比較すると、「脂が濃い」「餌の違いで味が変わる」などと言われていますが、生育が安定しているのは養殖魚で、病気になりにくい魚体を作るために様々な工夫が施されているため、あながち天然より劣るとは言い難いのかもしれません。
淡路島三年とらふぐをテーマにした食事会を催すと、「それは天然ですか?養殖ですか?」と尋ねられることがしばしばあります。三年という育成年が表記されていることからもわかるように養殖魚なのがその答えです。他の養殖魚と比べて淡路島三年とらふぐに、天然にも優るとも劣らぬブランド力があるのは、その特性例がはっきりしているからなのです。とらふぐは、多くの地域で養殖されており、ふぐの中でも王様格。福井・兵庫・香川・愛媛・大分・長崎・熊本がその有名産地です。とらふぐは高級魚で、価格が高くても満足してもらえる食材のひとつ。特に関西人は、ふぐ好きで「一年の締めくくりは、ふぐで忘年会」と言う人までいるくらい。そんな関西人に向けて生産地では多くを出荷しますが、養殖するにはなかなか厄介な魚と言えなくもないでしょう。ふぐは毒を持つ魚なので料理人は免許が必要で、処理にも工夫がいります。ただそんなことは承知の上で、それはあくまでも現場(料理店)での話です。養殖上での問題点は、噛み合う、膨れる、鳴くという他の魚には見られない特徴があること。そして噛み合って他のふぐを傷つけたり、飼育網を破るなど養殖上の難点はいくつかあるようです。
大抵、とらふぐは二年で出荷され、約800gのものが流通されます。ところが、淡路島三年とらふぐは、余計に一年養殖するので魚体が大きく成長。出荷時には1.2kg〜1.5kgになっています。大きければ、食感もよく、旨みはあるので、人気があるのも当たり前。天然ものに劣らぬ旨さになる所以(ゆえん)はそこにあるようです。では、他地域がなぜ三年の養殖を行わないかというと、そこには余分に養殖する分、リスクが生じるからです。ふぐは、大きければ、お互いを噛み合って傷つける恐れもあり、一年余計に育てる分、その間に死んでしまったりすることもあります。淡路島三年とらふぐを養殖する淡路島南部の福良(ふくら)では、成長途中で一旦プールへ移し、噛み合わぬようペンチのようなもので歯を切り、再び海の生簀へ放ちます。ふぐは歯がなくてもそんなに硬いものは食べないので餌を食すには不自由がないそう。このように様々な工夫を施しながら1.2kg〜1.5kgの大きさまで育てて出荷するのです。その肉厚たるや、十分な旨みと食感を持ったものに。このようにして全国にその名を轟(とどろ)かせる淡路島三年とらふぐが出荷されていくのです。
「さかばやし」では、淡路島の福良より三年とらふぐを直送してもらい、てっちりや一品料理、会席料理の一部でお楽しみいただきます。この12月のうまいもんを、ぜひ「さかばやし」にてご堪能ください。
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
料理長おすすめの「淡路島三年とらふぐの一品」
■淡路島三年とらふぐの鉄皮 1,100円
■淡路島三年とらふぐの薄引き 1,800円
■淡路島三年とらふぐの唐揚げ 2,000円
■淡路島三年とらふぐの小鍋 2,800円
※おすすめの一品は事前のご予約にて承ります。
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