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11月のうまいもん/秋の鰆(サワラ)

今月のうまいもんさかばやし

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11月のうまいもん/秋の鰆(サワラ)

春の魚と誤解する事なかれ。本来の旬は秋にこそ訪れる

 鰆の旬がやって来た。そう聞くと、皆さんは何か変に思うかもしれません。魚偏に春と書くのがその原因で、春が旬の魚との思いが強いからです。確かに春も美味しいのですが、漁場からすると、本来の旬は秋。脂が乗って美味しくなるのは晩秋から1月ぐらいまでの時季なのです。鰆は、サバ目サバ科に属す魚で、体長が細長く、狭い腹から挟腹(サワラ)と呼ばれるようになったそう。サゴシ→ナギ→サワラと成長するに従って名前が変わる出世魚にあたります。どちらかといえば西日本の魚で、春の頃に瀬戸内に入って来て産卵するので「鰆」の字が生まれたのだろうといわれています。昔は関西に都があり、文化の中心が関西発だったこともあり、「鰆」になったともいわれています。
 鰆は、鮮魚はもとより塩蔵品や干物、漬け魚としても多く流通しています。中でも多いのが西京漬け。白味噌・酒・みりんなどで作った地に漬けて作る西京漬けは、今や鰆の定番とされており、甘めの鰆が弁当や惣菜に最適とばかりに用いる人が多いように思えます。一見、焼き魚用の魚と誤解されがちですが、実は鰆の旨さは刺身にあります。鰆は、鯖の仲間ですが、青背の魚が持つ濃厚な味わいではなく、クセがない上品な味が特徴。「新鮮ならば刺身で食すべき」と漁場では言われており、「鰆の刺身は皿まで舐める」と、例えられるほどなのです。ただ、余程鮮度がよくないと生では出さないため、巷の料理屋では、あまり鰆の刺身を見かける事がありません。刺身で出すとしたら皮目に熱湯をかけて霜降りにしたり、皮目を炙って焼き霜造りにしたりと、色んなパターンで刺身を出したりするので、そんな楽しみがあるのも鰆の特性でしょう。
 ところで「浦サワラ」という魚ブランドをご存知でしょうか。これは、明石浦漁協が明石鯛・明石タコ・明石海苔に次ぐものとしてブランド化を図っているもの。同漁協では、一本釣りなどで秋に水揚げされた、脂乗りのいい鰆を「浦サワラ」と名づけています。この取り組みは、2020年から行われており、今年で5年目に入り、徐々に認知度も高まって来ました。獲れた鰆をカットする事なく、フィッシュアナライザーで脂質を測定。脂質5%以上を「上旨」として黄色いタグを付けて出荷。10%以上なら「特上」と名づけ赤色のタグを付けてセリにかける(出荷する)のです。これは魚介の品質を漁協が保証し、消費拡大を狙う販売戦略の一つで、俗に〝明石の魚″と称され、値打ちがあるとされる明石浦漁協のブランド化でもあるのです。同漁協でセリを担当する宮﨑鉄平さんによると、「明石産と明確化できるのが利点で、料理屋はタグ付きで仕入れたがる」とか。釣りの漁師が獲って来る10月から1月末ぐらいまでの鰆がその対象らしく、秋の時季にセリ場を覗くと、タグ付きの鰆が出荷されて行く様子が見受けられます。明石浦漁協では、黄色や赤色の上に紫色のタグが付いた浦サワラを設けているらしく、こちらは脂肪20%以上の鰆を認定するとの話でした。ちなみに紫色のタグが付いた浦サワラは、セリ見学に行った10月3日時点でまだ一匹も釣れていないそうです。
 ところで、「さかばやし」では、11月のうまいもんのテーマ食材を「秋の鰆」とし、会席料理の一部や一品料理でお楽しみいただきます。さらに、酒心館会席(要予約)には「浦サワラ」を一部提供する予定です。また、11月19日(火)18:30からは、明石浦漁協の関係者をお招きし、旬の会「明石浦の浦サワラとしぼりたて新酒を楽しむ会」を催します。ぜひこの機会に本当の旬を迎える秋の鰆をお楽しみください。

(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
2024年11月

料理長おすすめの「秋の鰆の一品」
■鰆南蛮漬け           850円
■鰆昆布〆 煎り酒ジュレ掛け  900円
■鰆焼き霜造り        1,300円
■浦サワラしゃぶしゃぶ小鍋  2,500円
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