10月のうまいもん/丹波 婦木農場の秋野菜
丹波 婦木農場の秋野菜
農場で製造されたチーズも黒枝豆同様に注目!
猛暑、酷暑とはよく言ったもので、今年の夏は連日体温レベルの暑さ。堪えたのは人だけではなく、野菜や米といった農作物にもかなりの影響が出ているようです。10月の収穫見込みを農家の方に聞くと、「季節は秋真っ盛りなはずなのに、9月が8月並みの暑さだったために作物の生育が思うようにいかない」と嘆いていました。毎年、この時季になると、丹波「婦木農場」の野菜を「今月のうまいもん」としてテーマ食材にするのですが、「さかばやし」大谷直也料理長も、「9月半ば時点で入って来そうな野菜は、蕪や大根、茄子、姫人参。それに軟弱野菜といった種類で、例年のように思うようには入荷しないかも…」とのことでした。それでも丹波の秋の産物である栗や黒枝豆は、10月には入荷予定で、「婦木農場」で採れるその味わいに楽しみが募ります。
「さかばやし」では、有名な農業家の婦木克則さんと以前から懇意にしている関係上、年間を通じて「婦木農場」から直送してもらう野菜を料理に活用しています。殊に10月は実りの秋で、丹波の黒枝豆を筆頭にいい野菜が入荷します。一般のお客様にも「婦木農場」の野菜の良さを知ってもらうべく、「婦木農場」産の採れたての秋野菜で彩った会席料理を味わう「旬の会」も10月の一夜だけ企画しているほど。この食事会には、毎年、婦木克則さんご夫妻が出席し、野菜の解説を交えながら会席料理を多くの方々と楽しみます。近年、この時に一緒に届くのが、「婦木農場」で作られているチーズ。〝百姓王子″こと、長男の婦木敬介さんの手によるもので、「第13回ALL JAPANナチュラルチーズコンテスト」にて最優秀賞を獲得したこともあってそのチーズづくりが一躍脚光を浴びました。全国的に見ても乳牛の飼育からチーズの製造まで一つの農家でやっている例は珍しいそう。以前から婦木克則さんは、「牛を飼って米や野菜を栽培する昔ながらの農家」と謙遜していましたが、その特徴がうまく繋がっている事業例だと思います。「婦木農場」で飼育しているのはジャージー牛。牛乳の量を考えると、ホルスタインが多いのですが、脂肪分が高いのはむしろジャージー牛。「その分、加工向き」と婦木敬介さんは語ります。周辺の草や農場で出たクズ野菜もジャージー牛の餌になるらしく、「50年前と変わらぬ飼育方法」がチーズとしての出来映えに繋がっているようです。「婦木農場」をテーマにした「旬の会」では、そんなチーズが提供され、顧客からは「絶品!」とのお墨付をいただいています。
丹波・春日町に位置する「婦木農場」は、江戸時代から続く農家で、最も古い記述によると、宝暦4年(1754年)に十代前の当主逝去の報が載っているとの話。神戸酒心館も宝暦元年の創業なので、歴史的に見ても同時代に活動していたことがわかります。現在の当主である婦木克則さんは、無農薬栽培や有機栽培では一目置かれている人物。世間がまだ無農薬栽培に注目していなかった約30年前からそれを実践していました。現在、1.5haの土地で年間百種以上の野菜を作っており、紙マルチなる方法で育てたお米と共に、「婦木農場」らしさを醸す産物に。これらは当然ながらグルメから高い支持を得ています。「婦木農場」の産物を取り寄せているファンも多く、「野菜が持つ本来の味がする」と言って評価しているのです。
「さかばやし」では、その「婦木農場」より採りたての秋野菜を直送していただき、10月のうまいもんとして会席料理の一部や一品料理に提供します。この機会に有名ファームが育てた極上の秋野菜を「さかばやし」にてご堪能ください。
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
2023年10月
料理長おすすめ「丹波婦木農場の秋野菜」の一品料理
■丹波婦木農場の小松菜と茸のお浸し 800円
■丹波婦木農場の秋茄子と秋刀魚の酢〆 850円
■鰆の酒蒸しと丹波婦木農場の秋野菜炊き合わせ 1,000円
※おすすめの一品は前日15時までのご予約にて承ります。
※価格は税込価格です。
※写真はイメージです。