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1月のうまいもん/須磨海苔

今月のうまいもんさかばやし

さかばやし_今月のうまいもん_須磨海苔
須磨沖で獲れる海苔は希少価値
 

 最近、神戸の各地で"須磨海苔"なる言葉を目にするようになりました。須磨海苔とは文字通り、須磨沖で養殖される海苔を指します。海苔の歴史は古く、大宝律令にもそのことが触れられていますが、須磨沖で海苔養殖が始まったのは、昭和36年ごろとその歴史は比較的新しいようです。もともとは瀬戸内は魚介の宝庫。海苔の養殖をしなくとも魚介の水揚げ量が豊かだったのですが、昭和30年代に入って漁獲量が減る冬の時期になんとか収入源の確保をと始めたのが海苔養殖のきっかけです。兵庫県内の海苔は、佐賀有明に次ぐシェアで、生産枚数が約14.2億枚。明石海峡を中心とした潮流の速い漁場で育まれ、黒いつやがあるのが特徴。やや硬いこともあってコンビニの直巻きおにぎりの材料としてよく使われていました。海苔といえば、全国的に見ても有明がトップブランドで、全体の22%もを占めますが、それでも兵庫県産は18%となかなかの健闘が光ります。一時はその用途(コンビニの直巻きおにぎりの材料)もあって有明を凌ぐ勢いがあったほどです。その名も"兵庫海苔"として売られているため、この文字を目にしたことがある人が大半なのではないでしょうか。ところが最近は各地でブランド化を図る動きがあり、明石浦漁協も"明石のり"ブランドとして売り出していますし、神戸市漁業協同組合でも"須磨海苔"を2007年に地域ブランドとして商標登録し、そのPRに勤しんでいます。ただ、大半の人が目にしにくかったのは一般消費より業務用としての流通が多かったからではないでしょうか。
 須磨沖での海苔づくりは、10月に育苗し、12月から収穫を始めます。この収穫が1月頃に最盛期を迎え、4月まで続くのです。一般的に海苔は、浅い海に支柱を立て網を張って育てるために潮の干満によっては海面から顔をのぞかせることがあります。ところが須磨沖を含む瀬戸内海では水深があるため、その手の養殖が行えず、ブイを浮かべて網を張り海苔の胞子を育てるのです。このやり方では海の中にずっと浸ったままになるので、色も濃くなるようです。ただ、この浮き流し式だと、栄養価もたっぷり吸うという利点も生じます。これらの養殖作業が大変で、海苔網を海水から出して乾燥させるのが我々が考えるより重労働のよう。これが因で一時は海苔養殖をする漁師が激減する憂き目を見ました。2014年にすまうら水産有限責任事業組合ができてからは効率化と機械化ができ、共同で海苔養殖を行うようになりました。ここ最近は神戸市が一層PRに力を入れ始めたこともあって"須磨海苔"が徐々に知名度が高まりつつあるのです。
 「蔵の料亭 さかばやし」でも昨年からは、この時季に"須磨海苔"を仕入れて様々な献立に用います。板海苔だけではなく、生海苔やそれを用いて作った佃煮など、色んな献立に活用してまいりました。前述したように海苔漁が最盛期を迎える1月に、今月の「うまいもん」として須磨海苔にスポットをあてています。ぜひともこの機会に地元ならでは名品を味わってみてはいかがでしょうか。
須磨海苔料理01b
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
 
料理長おすすめ「須磨海苔」の一品
■粕汁小鍋 須磨海苔とともに  1,300円
■須磨海苔の佃煮  500円
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