1月のうまいもん/須磨海苔
潮の香の印象を強めたい、神戸の〝推し海産物”
神戸は、世界的に有名な港のひとつです。平清盛が地理的特徴をいかし、大輪田泊を開いて以来、兵庫津が栄え、幕末には神戸港が欧米への扉を開きました。そこから異国の文化が次々に入って来たのです。そのような貿易で栄えた港は、すぐに想像がつくものの、潮の香漂う海産物のイメージが薄いのも事実。神戸市の隣りに位置する明石が漁港の印象が強く、明石鯛に明石ダコという全国的な名産物を持つのでどうしても神戸に魚介類のイメージがそぐわないのかもしれません。しかし、春の風物詩とされるイカナゴの釘煮は、塩屋や垂水が発祥なので神戸=海産物の印象が合わないだけで、海の名産品はあるのです。「明石に負けておれるか」とばかりに、このところ須磨の漁師達が元気で、2021年に愛知淡水より約400gのホウライマス系ニジマスを須磨に持って来て、沖で養殖を始めました。約1.5〜2kgサイズまで成長させて「神戸元気サーモン」として出荷しようと計画しています。「さかばやし」でもいずれこの「神戸元気サーモン」を春に提供する予定です。
ところで、「神戸元気サーモン」より前から須磨の漁師達が力を入れているのが「須磨海苔」です。「須磨海苔」は、その名の通り須磨で養殖されており、2007年には神戸市漁業協同組合が地域ブランドとして登録しています。漁業関係者の話では、「大阪湾の豊富な栄養と潮の流れによっていい海苔ができる」そうです。海苔といえば、有明海産が有名ですが、瀬戸内産もそれに負けず劣らずの名品。黒くて肉厚があるためにコンビニの直巻きおにぎりによく使われています。兵庫県(瀬戸内海側)は、海苔の名産地なので、「兵庫のり」の名前が轟いていました。隣りの明石浦漁協も地域の海苔には力を入れており、漁協で聞くと、「明石の名産品は、タコに乗り(海苔)たい(鯛)なんて覚えるのだ」と話していました。神戸の須磨地区でも海苔の養殖にはことさら熱心で、「須磨海苔は、他地域の海苔と比べてタンパク質やアミノ酸、カルシウムが豊富で、黒くて肉厚であることが特徴」のようです。9月から種付けが行われ、育てられた海苔は12月中旬に刈り取られます。それを専用工場にて洗浄、裁断し、あの四角い形に作られるのです。そして乾燥させた後に加工海苔として出荷します。海苔というと、板海苔(焼き海苔や味付け海苔)をどうしても思い浮かべてしまいますが、私の嗜好はむしろ生海苔。それを調理に使ったり、佃煮にして出したりと、海苔の良さが最もわかる食べ方かもしれません。「さかばやし」では、生海苔を仕入れて、調理場にて佃煮風にしたり、椀物(吸物)などの素材としての使用を考えています。須磨海苔は、神戸市も力を入れて推す、いわば推しメンならぬ〝推し海産物”なのです。「さかばやし」では、「須磨海苔」の旬にあたる1月に、産地から直接「須磨海苔」を仕入れて、板海苔や生海苔で会席料理の一部や一品料理でお楽しみいただきます。ぜひこの時季に、神戸の〝推し海産物”である「須磨海苔」をお召し上がりください。
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
料理長おすすめ「須磨海苔」の一品
■須磨海苔佃煮 500円
■須磨海苔出汁茶漬け 650円
■粕汁小鍋 ~須磨海苔とともに~ 1,400円
※おすすめの一品は予約にて承ります。価格は税込価格です。
※写真はイメージです