1月のうまいもん/神戸産野菜
神戸は隠れた野菜の名産地
港町として発展して来た神戸は、外国からの影響を受けたせいか、街の食文化にも舶来のイメージが漂います。神戸の食というと、大半の人が挙げるのが、まずは神戸牛です。そしてスイーツやフランス・イタリア料理、中華料理の外国料理の順になります。オシャレな印象が強いせいでしょう、神戸のイメージにいつまでたっても“農業”が挙がらないのも現実です。神戸を印象づける市街地部分は、面積的には少なく、大半が山や田畑が存在する農地部分とベッドタウン部分なのです。先日、神戸市・農林水産課の人に話を伺ったのですが、神戸市の農作物生産量は兵庫県第二位にあたるそうです。第一位は南あわじ市で、これは玉葱などの生産量を見てもわかるのですが、神戸市が第二位とは驚きです。黒豆で有名なあの篠山市をも生産量で凌いでいるようです。
料理人に話を聞くと、「神戸の野菜はあなどれない。西区などは良い春菊が穫れるし、神戸トマトというブランドもあるくらい」と話していました。そういえば、二郎苺を代表に良い苺があるとの話も聞かれますし、北区などには観光苺園も沢山見られます。いちじくだって、関西では川西市、柏原市、神戸市が三大産地と呼ばれているくらいなのです。
以前、「蔵の料亭 さかばやし」の“旬の会”で西区で採れる「筍」をテーマ食材にしたことがありました。「筍」というと、京都の西京区や長岡京で採れるものが有名で、ブランド食材として流通しますが、それに比べても西区の山で採れたものは、なかなか秀逸でした。JA兵庫六甲の企画担当者は「筍専用の山こそありませんが、農家の方の敷地内(竹林)に生えているものを採ってくるだけで十分味では引けを取りません」と言っていました。その理由は、鮮度にあります。西区と「さかばやし」がある東灘では30分もあれば運んで来ることが可能です。“遠くのA級ブランドより近くの新鮮野菜”のフレーズがそのまま表現できるからなのでしょう。
神戸の「筍」はブランド食材ではありませんが、実は軟弱野菜は全国に名を轟かすほど有名です。軟弱野菜とは、春菊・水菜・小松菜・ホウレン草などの青い(緑)葉物のことをいいます。読んで字の如く、鮮度が決めてで、弱いのでそう呼びます。これら青物を葉物野菜という人がいますが、厳密には間違いで、葉物にはしっかりしたキャベツや白菜も含まれてしまうのです。
神戸の農作物は北区や西区、繁華街まで一時間かからぬ距離にあります。そこで生産されるものは、飲食店やスーパーに出荷したとて、それほど鮮度が落ちぬため、都市近郊型農業の典型を示すことができるようです。日持ちがしない軟弱野菜にとっては、これほど適した場所はなく、そのため神戸は全国有数の軟弱野菜産地として業界では名を馳せるようになりました。全国から農業関係者が視察に訪れるほど技術的にも高いため、良い野菜が収穫されています。さて、「さかばやし」では、地産地消をこれほど謳えることができるテーマ食材はないと考え一月は、神戸野菜を“今月のうまいもん”として献立に取り入れます。会席料理の一部や、一品料理にも使用します。地元神戸の畑で穫れた身近な名産品をこの機会にぜひご賞味ください。
(フードジャーナリスト・曽我和弘)
料理長おすすめ「神戸産野菜」の一品
■神戸産小松菜のお浸し 500円
■紅ずわい蟹と神戸産蕪の酢の物 1,000円
※価格は税込みです
※数量限定となっておるため、品切れの場合もございます。
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