神戸酒心館

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3月のうまいもん/酒粕料理

今月のうまいもんさかばやし

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寒の日に暖をとるには、「酒屋鍋」がいい

 2月1日から3月31日まで、毎年恒例の酒粕プロジェクトが「さかばやし」を始め、兵庫・大阪・和歌山の参加飲食店で開催されています。同プロジェクトは、酒粕の一般市場への流通量が少なくなった事から「このままでは関西に根づく酒粕文化がなくなってしまう」と危機感を持ち、神戸酒心館が旗振り役を担って始めた企画。今年で11年目を迎えており、多くのシェフが賛同して盛り上げてくれています。その効果で酒粕を料理に活用する料理人の人たちも少しづつ増えてきました。
毎年1月にマスコミ発表会を開き開催し、シェフ達が新作酒粕料理を披露。それに準じて2〜3月にフェアを開催する運びになっています。第11回目となる2025年度に「さかばやし」が発表したのは、大阪樟蔭女子大学の学生が創作した「酒粕麩の焼き三種」。この料理は先月の「うまいもん」に載せてあるので詳細はそちらをご覧ください。それともう一つ、「さかばやし」のオリジナルは、「酒屋鍋」です。
酒粕といえば、まず初めに思い浮かべるのが「粕汁」でしょう。粕汁は、関西の冬の風物詩ともいうべき定番料理。酒粕を加えて味噌仕立てや醤油仕立てで煮込んだ汁物料理。起源は不明ですが、酒どころ灘や伏見を背景に伝わったとされ、本格日本料理店から大衆食堂まで関西では幅広くメニュー化されています。「さかばやし」でも当然定番メニューになっており、新粕を待って秋口には「いつメニュー化するのか」と楽しみにしている顧客が沢山いるようです。「さかばやし」では、冬場は勿論の事、毎月20日を〝粕汁の日″として一年を通してそれが味わえるよう企画しているくらいです。ちなみになぜ20日かというと、京阪神では1月20日に正月に食べた塩鰤の骨や頭を大根などの野菜と一緒に煮て粕汁にして食べた事から、その日を「骨正月」と呼びました。粕汁は昔からこの地の郷土料理で、食材を無駄にしない始末の知恵がそこに詰まっていたのでしょう。その骨正月にちなみ「さかばやし」では、毎月20日を〝粕汁の日″と定めています。
粕汁は、農林水産省のHP内「うちの郷土料理」にも掲出されているほどで兵庫県ではおなじみの一品。その鍋バージョンとでもいうべき料理が「さかばやし」で人気の「酒屋鍋」なのです。それは、「福寿」酒粕をたっぷり使用し、白味噌と和風だしで合わせたまろやかな味。鰤や鮭、豚肉や様々な野菜が入っているので、それらのだしも出て風味豊かな鍋料理になっています。酒粕は、調理に用いると、酒香が付くばかりではなく、食材を柔らかくしたり、味をまろやかにする効果も。おまけに食材の旨みを引き出してくれる効能もあるのです。栄養面では、タンパク質、ビタミンB1・B2・B6、葉酸、パントテン酸、食物繊維を含んでいるためにとってもヘルシー。健康的要素が注目されるスーパーフードともいえます。その昔、蔵人達は、酒造りのために暖房のなかった酒蔵に入って仕事をしていました。そんな冷え切った身体を暖めてくれたのが、仕事の後の酒粕鍋(酒屋鍋)だったのです。「さかばやし」では、蔵の料亭らしく、古えの酒粕鍋を再現し、日本料理の一つとして提供しています。
今年1月に催された発表会でマスコミ陣を驚かせたのは、「酒屋鍋」の締めの一品。普段ならうどんを入れて締める所を、なんとパスタを入れてカルボナーラ風の料理で締めたので参加者はびっくりしたようです。「酒屋鍋」の残っただしに、さらに酒粕を追加。卵・生クリーム・ベーコン・胡椒を足し、パスタを入れて煮込みながら絡めていきます。するとイタリアン風のカルボナーラもどきに変身するから驚きます。チーズを加えてないのに酒粕がチーズの役目を担ってイタリアン風の味を創出しているのです。本来なら「さかばやし」でも出したい所ですが、流石に日本料理店なのでそうはいきません。「さかばやし」では、日頃から「酒屋鍋のだし」を販売しており、それを購入すると、家庭で締めのカルボナーラ風を味わえるようにレシピを添付しています。酒粕鍋とカルボナーラの競演は、ぜひともご家庭でお試しください。
「さかばやし」では、2〜3月のうまいもんとして福寿「酒粕」を取り挙げ、それを用いた料理の品々を提供しています。3月といってもまだまだ寒く、そんな日には酒粕料理がぴったりだと思います。

(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)

料理長おすすめ「酒粕料理」の一品
帆立貝の酒粕和え・純米吟醸02d
■酒粕ちー寿(チーズ)        880円
■海老と山菜の酒粕白衣掛け     1,100円
■帆立貝の酒粕和え         1,100円
■粕汁おでん            1,400円
■粕汁小鍋              1,600円

※料理長おすすめ「酒粕料理」の一品は事前にご予約ください。

大大阪樟蔭女子大学学生考案の一品

■酒粕麩の焼き三種 1,200(円)
※「忘れ去られた麩の焼き」として学生がネーミングした一品。
※シラスの釘煮・大豆ミートの時雨煮・あんこと餅と焼いた酒粕を合わせた酒粕料理
※平日限定2日前の要予約

考案をした学生

※写真はイメージです