1月のうまいもん/須磨海苔
黒くて肉厚がいい地元の名産品
私達の食生活に欠かせないものの一つが海苔でしょう。日本人と海苔の関わりは古く、1500年前ぐらいから食していたとも伝えられています。海苔の消費量を見てみると、2020年の調査では佐賀県が全国トップ。流石に海苔の名産地である有明海を抱えている県といえるかもしれません。ちなみに佐賀県・福岡県・熊本県の三つを合わせると、海苔の生産量は全国の約6割を占めるそうですから、有明産ブランドの豊かさを認識せざるをえないでしょう。
有明産ブランドと並んで評価が高いのが瀬戸内産。兵庫県と香川県がその主要生産地で、全国の約2割を占めます。瀬戸内の海苔は、有明産に比べ、ややしっかりめ。パリッとした食感がその売りです。瀬戸内海での海苔の養殖は、昭和40年代に浮き流し養殖が普及したのがきっかけで、兵庫県と香川県が二大産地に成長しました。特に兵庫県の瀬戸内側は、大阪湾からの栄養と明石海峡の速い潮流が海苔養殖にいい環境を及ぼしているようです。明石浦漁協で聞くと、明石の名産を「凧(蛸)に乗り(海苔)たい(鯛)」と覚えるのがいいそうです。魚の町・明石の名産に挙げられるほど瀬戸内の海苔は誇ることができる郷土の産物なのです。
明石の隣りに位置する神戸市も海苔の品質の良さでは負けていません。近年何かと話題に上る須磨海苔もそのひとつ。須磨海苔は、2007年に神戸市漁業協同組合が地域ブランドとして商標登録し、以降その名を高めて来ました。名称でもわかるように須磨の海にて養殖されているもので、他産地に比べタンパク質やアミノ酸、カルシウムが豊富で、色が黒く、肉厚のある海苔を産します。何でも海中のリンや窒素が影響し、海苔が黒く色づくそうで、炙ると風味が出て濃い緑色に変わります。
神戸では、9月末〜10月上旬にかけて種付けを行い、10月下旬には育苗をスタートさせます。そして12月中旬には、いよいよ摘み採りを始めるのです。海苔の摘み採りは、12月から4月にかけてシーズン終了までに10〜12回ほど収穫します。一番海苔と称されるのは、一回目に摘み採ったもの。年間の2〜3%しかない貴重な品となるようです。この一回目に摘み採った海苔は、新芽海苔とも呼ばれ、香りがよく、柔らかで口に入れると、とろけるようになります。海苔といえば、生海苔、板海苔、切り海苔、刻み海苔、味付け海苔と様々なスタイルで売られていますが、中でもオススメは生海苔。これは海から採った状態のままで、寒冬の頃に採れるものが歯応えもあって香りもよく、旨いとされています。ちなみに生海苔を乾燥させたのが乾海苔で、さらにもっと乾燥させると、我々がよく食す焼き海苔ができるそうです。
ところで「さかばやし」では、地産地消を謳うべく、地元の名産である須磨海苔を仕入れ、1月に「今月のうまいもん」として店で提供します。時に生海苔が出る事もありますし、それを使用した海苔の佃煮なども用意しています。今月は須磨海苔を会席料理の一部や一品料理でお楽しみいただけますので、ぜひこの機会に神戸の新たな名産品をご賞味ください。
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
2024年1月
料理長おすすめ「須磨海苔」の一品
■須磨海苔の佃煮 500円
■須磨海苔入り鯛のみぞれ小鍋 1,400円
■粕汁小鍋 ~須磨海苔とともに~ 1,500円
※おすすめの一品は予約にて承ります。価格は税込価格です。
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