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酒心館チャンネル 004_味わいと香り/味覚と嗅覚

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こんにちは。
今日は味覚。「味」についてのお話です。
皆さん毎日、食べ物や飲み物、特にお酒を飲んで楽しまれていると思います。
しかし日頃から「味」の感覚に集中し、それがどのような味なのか分析しているでしょうか。専門家でもなければ、そこまで集中することは少ないと思います。
実際、味を楽しむという行為は分析とは全く異なります。詳しく分析をするほど、分析に注力しすぎるため美味しく味わえなくなるからです。

一般の方は詳しい分析についてご存知なくても良いのですが、ひとつ覚えていただきたい事があります。
皆さんが味わいだと思っている情報のほとんど全ては「香り」だという事です。

「味」は何種類あるかご存知でしょうか。
いろいろな味があると予想されるでしょうが、実は「味」と呼ばれる情報の種類は4つしかありません。
「甘味」「酸味」「塩味」そして「苦味」。
この4つしかありません。
これは、欧米のほとんどの方が今でも信じている事です。
しかし日本に住む私達はもうひとつ味があることを知っています。最も重要であるかもしれないこの味は「旨味」と呼ばれています。この「旨味」を足して、味は5つ存在します。このことは味覚の研究者にとっては常識になっています。

しかしいろいろな味わいを表現するためには、この5つでは十分ではありません。例えばバナナの味という味は存在しません。
バナナに「甘味」はありますが、「バナナの味」は存在しないのです。では、みかん味はあるのでしょうか。「みかん味」もありません。しかしながら「バナナの香り」そして「みかんの香り」は存在します。それぞれの香りに甘味が加わり、バナナとみかんの味わいが識別できるのです。
味わいに香りが重要であることを示すため、レモンとライムを例にあげてみましょう。
レモンとライムの「味」はほぼ同じ味です。レモンとライムの酸味は同じクエン酸と呼ばれる酸味です。レモンとライムを味覚分析の機械で分析すると「酸味」であることは認識できますが、レモンとライムの区別はできません。
ところが私達は食べる前から、レモン、ライムの違いが判ります。なぜなら、私たちは香りでこの二つを識別できるからです。
味わいだけでなく香りからレモンの味、ライムの味。と私達は理解しているのです。

鼻をつまんで食事をすると、美味しくありません。
風邪の時は体力が低下し、鼻が正常に働いていないこともあり、味がよく判らないことがあります。
鼻を有効に活用するというのは非常に重要な事です。私達は香りを感じ、味を感じ、それらを分析してどんな味かを認識し、それを覚えていきます。
日本酒を楽しまれる時には、まず鼻をつかって香りを嗅いで、それから口に含んで味わった後、戻ってくる香りも楽しんでください。鼻に直接入ってくる香りよりも、口に含んだあとに身体の中から戻ってくる香りのほうが沢山の情報を持っています。戻ってくる香りには、より多くの信号があり、私たちの脳に届きます。直接的な香りよりも、戻ってくる香りがより重要です。
その余韻を楽しむことにより、料理の風味と飲物の風味がよく合うかどうかという判断にもなります。

日本酒を楽しむ時は口に含んだ後、戻ってくる香りにも充分意識をむけると、より一層豊かな風味を感じとることができるのです。

*字幕付きでご覧いただけます(日本語・英語)